〒567-0085
大阪府茨木市彩都あさぎ7-6-8
TEL:072-641-9012(内線2402)
MAIL:moka@nibiohn.go.jp

English Page

研究内容

細胞核は、遺伝情報をつかさどるゲノムDNAを収納する真核細胞最大のオルガネラであり、核膜と呼ばれる二重の脂質膜で覆われています。細胞質で翻訳されるタンパク質のうち、核の中で働く核タンパク質は、細胞質から核へと運ばれなければ機能を発揮できません。また、核内で転写されたメッセンジャーRNAは細胞質に行ってはじめて翻訳に使われることができます。このように、核―細胞質間はタンパク質や核酸といった機能分子が絶えず行き来しており、その輸送制御は非常に重要です。そしてこれらの分子輸送はすべて核膜上にある核膜孔(nuclear pore complex: NPC、図1)を介して行われています。

図1. 核膜孔複合体

 核-細胞質間物質輸送の基本的な分子メカニズムは、これまで飛躍的に理解が進んできました。特に高等真核生物では輸送経路の多様化がみられ、組織や発生時期に応じた、より緻密な輸送制御が行われていることがわかってきました(図2)。一方、細胞の分化や老化、環境応答、さらには器官形成や行動といった高次生命現象において、核輸送システムがどのように制御されているのか、いまだに不明な点が多いままです。さらに、核輸送に携わる分子の異常が様々な病態に関連することが報告されています。例えば、核膜孔構成因子Nup98が形成する融合遺伝子の発現が白血病の原因となることが証明されていますし(図3)、また、核輸送因子importin-α1(KPNA2)は多くのがんで高発現することが知られています。このように、核輸送や核膜孔など、核―細胞質間輸送ネットワークの異常が様々な疾患に結びつくことが分かってきています。

図2. 核内外輸送の分子メカニズム

(左)核膜孔構成因子(ヌクレオポリン)の一つであるNup98の遺伝子は染色体の転座により様々なパートナー遺伝子との融合遺伝子を形成する。そして、これらのNup98融合遺伝子の発現が、白血病の原因となることが分かっている。(右)Nup98、およびNup98-HoxA9融合遺伝子の細胞内局在。Nup98は本来、核膜孔に局在するヌクレオポリンであるが、Nup98とホメオボックス転写因子HoxA9の融合遺伝子Nup98-HoxA9は核膜孔から離れ、核内でドット構造を形成する。

図3. Nup98融合遺伝子と白血病

 本プロジェクトは、「核―細胞質間輸送ネットワーク」をキーワードに、核輸送因子や核膜孔構成因子の機能と病態との関連、および各種疾患における機能分子の細胞内動態異常について研究を進めています。そして病態メカニズムの解明、および、それらを標的とした創薬を目指しています(図4)。また、創薬研究において重要課題である「薬剤の細胞内オルガネラへのターゲティング」に着目し、特に核への輸送を制御する効果的な薬剤送達システムの開発を目指しています。

図4. 核輸送をターゲットとした創薬研究のコンセプト

ページのトップへ